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明日からちゃんとするぞ!中尾淳乙「AMERICANA」を聴いた

リンダ・ロンシュタットがようやくロックの殿堂(Rock&Roll Hall Of Fame2014)入りをした。その授賞式がこの4月10日に行われ、リンダ欠席により、代わってボニー・レイット、エミールー・ハリス、スティービー・ニックス、キャリー・アンダーウッド、シェリル・クロウなどによりリンダの代表曲が演奏された。バック・コーラスにはグレン・フライ、ギターにはワディ・ワクテルの姿も・・。リハーサル不足は否めないが、リンダへの敬意と愛情を感ずる心温まるパフォーマンスだった。かつて権威とは対極にあったはずのロックが殿堂をこしらえ、「殿堂入りになど全然こだわっていない」権威を笠に着ないリンダの発言は実にかつてのロックそのものだった。

そんなリンダの受賞を記念してリンダ・ロンシュタット「デュエット(Rhino)」が発売された。たいして期待せずに聞いたが、ベストアルバムとは違った趣きがあり意外に楽しめた。そこで改めて強く感じたのはリンダのカントリー、ルーツミュージックテイストだ。アルバム冒頭1~3曲目を飾るのは、リンダの最後となったアルバム「ADIEU FALSE HEART」よりアン・サヴォイとのデュエット曲。ロックの殿堂入りする幸運な音楽家がいる一方、ローカルな地域で活動し音楽を心から愛する音楽家たちはこの世界に数多く点在する。ルイジアナを中心に活動しているアンとの温かな歌の交流はリンダの最後のアルバムとしてふさわしいものであったように思う。このアルバム曲で「デュエット」でも取り上げられた「I Can’t Get Over You」という曲はジュリー・ミラー(ブラウン)という女性シンガーによってかかれたものだ。アメリカ南部のルーツ・ミュージックに敬意を表したカントリー・ソングを「AMERICANAアメリカーナ」と呼ぶそうなのだが、ジュリーはそんな音楽家の一人だ。最近のカントリー音楽事情に疎くアメリカーナなる音楽ジャンルがあることをこのアルバムで知った。


同じくこの4月に「AMERICANA」というタイトルのアルバムを発表した日本人ミュージシャンがいる。中尾淳乙(JUNICHI NAKAO)がその人。1976年にアルバム・デビューしたオレンジ・カウンティ・ブラザーズというバンドでギターを弾き、その後も音楽家、プロデューサー、ミキサーとして音楽を生み出し続けている男だ。アメリカ・マーケット進出を図ったZZトップばりの骨太ロックバンドFandango、ルーツ・ミュージックを追求したDancing Feetを結成したり、再結成されたオレンジ・カウンティ・ブラザーズにも時々参加している。

この日本で40年ほどアメリカ南部のカントリー&ロックを演奏し続けている彼の心意気がこの「AMERICANA」というタイトルには込められている。アメリカ南部(テキサス/メキシコ)を舞台にした映画の一シーンの映像が浮かぶような歌詞にドブロ、ハーモニカ、アコースティック・ギターなど彼の多重演奏と気心の知れた音楽家とのリラックスした演奏が繰り広げられる。彼の珠玉のテレキャスター・ピッキンも健在だ。このアルバムではテクニックをひけらかさない地味とも思えるほどの奏法だが、テレキャスターを知り尽くしているギタリストにしか表現できない世界を聴くことができる。

がしかし、この初のソロアルバムではまずシンガー&ソングライターとしての彼がいる。ほぼ全曲が日本語による自作だ。テレキャスターの6弦にベースギターの2弦をはりぶっとい音を響かせるギターが印象的で間奏のロックンロールギターがかっこいい「ちゃんとするから、あしたから」と言い訳する男が主人公の曲(Chanto Chanto)。ケイジャンフィドル鳴り響く演奏の中、未練を言い続ける男(Bad Sign)浮気現場を見つけられ男から一発くらい、部屋を逃げ出しアスファルト道路の白線を走り続ける男(Running On The White Line)。女からの追及に言葉を失くす男(Men Don’t Talk)汽車で放浪を続ける男(Keep On Truckin’ )どこかニ―ル・ヤングのカントリー曲を彷彿させる、酒場で暮らすぐうたら男(A Friend In El Garcino)オレンジ・カウンティの世界にも通じるアウトロ―(はみ出し男)の見本集のような作品に混ざってジャグミュージック風に演奏される息子が初めてしゃべった言葉(Zee Zee Jai Jai)「愛を知り、永遠を知る どこかに行きつき、何かをえる」(Life)など人生の機微をうたう歌がそっと混じる。オレンジ・カウンティでは描き切れなかった深く洒脱な表現を随所に聴くことができる。演奏もオレンジ・カウンティの再現を注意深く避けている印象がある。

中尾淳乙氏とは個人的な知己を得て40年を超える。この30年間は東京/札幌と距離もあり、お互い何かと多忙で連絡しあう機会はなかなか持てなかったが、若いころの生き方を貫く彼の生き方は、どこか眩しかった。離れていても存在は常に意識していた。たくさんのものを捨てながら人は大人になっていくものだが、彼は自分の大切なものを決して手放しはしなかった。このアルバムでの豊潤な音楽の世界はそんな彼の生き方があってこそのものだ。

アルバム最後の曲はインストロメンタル曲「Dawn At The Canyon」。日本的ともいえる情緒をたたえた曲にも聴こえるが、聴き進むとマカロニ・ウエスタン(エンニオ・モリコーネ)、60’sギターインストなどの音楽性が混在し摩訶不思議な無国籍な世界を聴くことができる。彼が音楽に目覚めてから50年かけて熟成された世界だ。クエンティン・タランティーノがこの曲を見つけ映画で使ってくれないものか。
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音源に添えられたアルバム画はオレンジ・カウンティのすべてのジャケット画を手掛けている、奥様のKIKKOさんによって描かれたもの。「Dawn(夜明け)」と題された、砂漠の朝焼けに屹立する巨大なサボテン画。彼にとって今はまさに夜明けの時なのかもしれないと想像するに難くない、素敵な画だ

アルバムはAMAZON iTUNESでダウンロード購入することができる。60年代70年代にアメリカ音楽を聴いた方、カントリー音楽が好きな方、ロックン・ロールCAN NEVER DIEとかつて思っていた方、いや音楽好きの皆さんすべて、どうぞ一聴あれ。ちゃんとするぞ、明日から!元気をもらえます。

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