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ザ・ヴェンチャーズ初見参 ありがとうドン

結成40年センチメンタル・シティ・ロマンスのキーボード奏者として、また売れっ子プレイヤーとして様々なレコーディング、ライブに引っ張りだこの細井豊さんがガーシュウィンを訪ねてくれた。女優の岸恵子さんの自作小説の朗読会の背景音楽を、ピアノ、アコーディオン、ハーモニカなどで独奏する仕事のための札幌入りだった。細井さんの計いであやこは朗読会を鑑賞し、終了後は楽屋で岸恵子さんご本人に紹介していただけた。意外に小柄だが、高いヒールを履きこなし、82歳とは思えない凛としたたたずまいに圧倒されたそうだ。昭和を代表する大女優である。


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僕は同じ82歳のギタープレイヤーの引退公演に行ってきた。その名はドン・ウィルソン。言わずと知れたザ・ヴェンチャーズのリーダーにして最後のオリジナルメンバー。テケテケギターのパイオニアのひとりである。このクロマチック・ラン奏法から発せられたエレキ音が雷に変わり脳天を打ち抜かれた若者が1960年代半ばに続出した。「続出」がどの程度の割合かは多くの意見があるところだが、中学校のひとクラスに数人でも全国規模では相当な数になるはず。僕も雷に打たれた一人だがそれは中学1年生の頃、小学校まではエレキ音が響く家を見つければ、ガキっ子たちと「不良、不良」と窓を指さしていたのだから、人生どう転ぶかわかったもんじゃない。

1965年、日本でエレキブームが起きたヴェンチャーズ二度目の来日公演、札幌では道新ホール(定員650名)での公演だったそう。僕にとって当時小遣いはシングル盤を買うだけで飛んだのでライブを見るなどという発想はなかった。そんなこんなでヴェンチャーズを生で聴く機会は一度もなかったのだが、今回のコンサートはドン・ウィルソン最後の公演であることを知り、ヴェンチャーズのドン(首領)のドンに仁義を切らねばとチケットを早々に購入した。

2015年8月3日(月)札幌ニトリ文化ホールに到着してみると、入場が遅れたのか会場前は長蛇の列、当日券は「売り切れ」とあった。2400名収容の会場だからこれはたいしたものである。列に並んだ、昔はチョイワルだったかもしれない先輩諸氏、同輩、今では初老のオヤジ集団。夫婦連れも数多く見られる。

ステージは「クルエル・シー」からスタート。中学校時代のスキー学習、スキー場のスピーカーから流れるこの曲には文字通り痺れた。純白のゲレンデが蒼い海原に変わった。メンバーの二人は亡くなったが、ステージで演奏される曲目はこの50年間ほとんど変わっていない。しかし、かつての栄光にすがり巡業をおこなう音楽家に対して「ヴェンチャーズ興業」と揶揄していた自分の独断は撤回しようと思う。全国津々浦々今でも多くのファンを持ち、50年間それらの人たちに「若さ」を提供し続けたのだ。その間の努力たるや並大抵のものではなかったであろう。78歳のリード・ギター、ジェリー・マッギーの「朝日のあたる家」は想像していたよりずっとかっこよかったし、テクニックは今でも素晴らしい。メンバーは皆真面目に誠実に粛々と仕事をこなしていた。

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ドン・ウィルソンはデビュー当時の資料を見ると身長175センチと記されているが、ステージの彼は背中が曲がり、身長も随分縮んで見える。しかし、ギターを持つその姿は誇らしげなものであった。この50年間ステージのアンコール曲はドラムソロが延々と続く「キャラバン」が定番だったそうなのだが、今回は「ダイアモンドヘッド」「パイプ・ライン」のメドレーだった。ドンがまさに(リード)リズムギターといった趣でステージのフロントに立ち「テケテケテケ」の連発。多少指がもつれようと、入りを忘れようとそれがなんだ。有終の美を飾るというのはこういうことなのだ。縮んだはずのドンがそのときは大きく大きく見えた。


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