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サチモス(SUCHMOS)TAIHEI君との対話

BAR GERSHWINの営業は宮田あやこライブを終え、午後11時を回ると、どこかホッとしたリラックスした雰囲気が店内、お客様にあふれてくる。

そんな時間帯にひとりの青年が現れた。「初めてです。いいですか?」折り目正しいその物腰はセンスあふれる体裁とはちょとアンバランスであったけど、カウンターに一人座った。しばらく雑談していると、地元の青年ではないことがわかった。「ピアノがあるんですね。僕も音楽で生活しています。」。謙虚にプロの音楽家であることを明かした。

彼は現在全国ツアー中のバンドのキーボード奏者で明日はZEPP SAPPOROでのコンサートがあるという。「僕らのバンドはサチモス、というんです。メンバーがバンド名で悩んでいたとき、楽屋でルイ・アームストロング(サッチモ)の音楽が流れてきたんです。サッチモの響きがいいので使わせてもらったんです。そのときは意識していなかったのだけど、偉大なブラック・ミュージックのパイオニアだと分かって・・単なる偶然ではなかったのかもしれません。」。彼のアーティスト名はTAIHEI(さん)。


「ピアノがあるっていいですね。」GERSHWINのピアノを気にする。「どうぞ演奏してもいいですよ」と声をかけると「いいんですか?」と言いつつも臆することなくピアノに向かう。ジャズのスタンダード曲を二曲ほど演奏する。「たまにジャズの場に行って演奏させてもらうんです。ボロクソに言われて、落ち込むんですけど、前より良かったと言ってもらいたくて足を運ぶんです。」

あやこのアルバムにあった「DESPERADO」が好きな曲らしく、「歌ってもらえますか」と初見の楽譜で演奏する。
「エイトビートは難しいのよ」とあやこ。「俺八分音符は自信あります」と軽く火花が散ってセッションはスタート。彼自身プレイに納得いかなかったらしいが、負けず嫌いの彼のことだから次回はあっと驚くプレイを聴かせてくれる予感がする。

GERSHWINのピアノを「この子、艶かしく、なんともいわれぬ音していますね。」とまるで女性を愛おしむかのように扱う。カウンターに座っていた好青年は、鍵盤と向かい合うとそこはかとない色気とオーラを漂わせる。


幼い頃ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」をピアノで演奏したかったが楽譜が見つからなく自分で一生懸命コピーした経験も語ってくれた。

「ラプソディ・イン・ブルー」はクラシック音楽に分類されるけれど、その音楽世界に濃密に漂うのは黒人音楽の持つ艶めかしさである。ガーシュウィンは白人作曲家で初めて黒人音楽の影響をクラシック作品に表した人である。20世紀の音楽を後世の人が振り返ったとき、おそらく黒人音楽隆盛の時代として捉えられるだろう。ジャズもロックもみなその子供である。

翌日早速サチモスのCDを買い求めた。

サチモスはブラック・ミュージックに心酔していて、「ルーツ・ミュージックに敬意のないミュージシャンには腹が立ちますよ。」とJポップの音楽家とは一線を画すとTAIHEI君は主張する。彼らの音楽を聴くとジャミノクワイはじめ様々な音楽の影響下にあることは明らかだけど、彼らはそれを隠さないし、表現することに夢中なことがよく分かる。ダンサブルでありファッショナブルであるけど、彼らの音楽は新しいのにどこか懐かしく、哀愁を感ずる。松任谷由美はじめベテランミュージシャンが彼らの音楽に注目する理由がよくわかる。TAIHEI君が知らなかったリトル・フィートを聴かせると(彼のピアノにビル・ペインを感じたので)大喜びしてくれた。打てば響くとはこういうこと。真綿が水を吸い込むがごとく、音楽を吸収している。

より深く掘り下げることだ。清濁併せ持つ井戸掘り作業の後見えてくる唯一無二の世界、その時TAIHEI君が言っていた、多くのミュージシャンに影響を与え、世界に進出できる素地が出来上がる。

いい出会いだった。刺激をもらった。最近の音楽を聴いてこなかったことをちょっぴり反省。良質の音楽の継承はしっかりとなされていた。サチモスの今後の活動に幸あらんことを。


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